第 333 回 PTT のお知らせ


日時:2007年 5月31日(木) 18:30 から


場所:電気通信大学 総合研究棟 3F 306号室 (地図の21番の建屋)



話者:
棟方渚(公立はこだて未来大学)


話題:ユーザのモチベーションや情動を促すインタフェースシステム

概要:
近年,様々なインタラクティブシステムの研究や開発が行われている. しかし,それらのシステムに対して一度でも飽きを感じたユーザは, 以降そのシステムとのインタラクションを行わないことが普通である. そこでユーザのモチベーションや情動に着目し, 「ユーザとのインタラクションを持続させる」という新たな視点から, インタラクティブシステムのあり方を提案する. また,発表者がこれまで製作してきたゲームや インタラクティブシステムを紹介しながら,その着想にいたった 根本的な理由および現在の研究課題について考察する.



第 333 回 PTTメモ

出席者:

伊知地宏(ラムダ数教研)、並木美太郎(東京農工大)、美添一樹(中央大)、
金子知適(東京大)、日比野啓(朝日ネット)、石畑清(明治大)、
三廻部大(日本IBM東京基礎研)、塚原保夫(旧公立はこだて未来大)、
疋田敏朗(トヨタIT開発センター)、石崎賀昭(NEC)、匿名希望、
勝木貴志(電気通信大OB)、多田好克、渡邊隆造、寺田実、高須賀清隆、
杉本麻樹、冨田正浩、清水紀芳、丸山一貴(電気通信大)


質疑応答:

Q.実験の時に「あるくま」という名前,システムの名前は,被験者に知らされていたのか?
A.被験者は知らない.心理実験ということで募集をかけ,ロボットのことも知らない被験者に
  実験を行った.また,実験開始後3分で,質問を受けつけるという教示をし,実験を行った.

Q.インタフェースに対して人間の反応を見るということは面白かったが,そこで,何に対して
  人間のモチベーションが発生しているのか考察を聞きたい.例えばゲームという点に対しては
  趣味とかの個人差があるけれどもそれに対するモチベーションは?
A.実験では出てない.生体信号ではゲーム性があるという点でモチベーションが発生している.
  あるくまに関しては理系学生で実験した結果であるけれど,最近お茶女の人にやってもらった
  ところ,個人差ということではないけれど,女性では人形遊びをしていたところから,操作の
  説明無しで直感的に操作して愛着を感じているようだった.この「あるくま」に対しては,
  実験では男女差は無かったが,そういった個人の趣向の違いでモチベーションの差は発生
  するかもしれない.

Q.例えば女性や子供などは人形に抵抗が無い.大人であれば人形を嫌いでモチベーションが
  あがらないかも?
A.そうなると思っていたが,あるくまに関しては歩かせ方を見つけた後に行動が変わることが
  観察された.これは男性女性に関わらず変わっていた.実験中に,歩かせる行為を発見した
  後に,ロボットに対する愛着が増している様子がみられた.毛並みをそろえたり,リボンを
  直したりする行動が観察された.愛着という点を利用して人のモチベーションを変えられる
  のでは.

Q.あるくまに関する考察について,子供がおもちゃの車を動かしているということは,車を
  持って自分で乗った気になるとかそういったものがあると思うが,それを考えると
  「あるくま」についても,感覚的にはわかるが,これはどういうことかと考えてしまう.
A.100%自分で操作しているのにも関わらず,アバタではなく別個の存在になるという結果に,
  自分も疑問を持った.しかし,そういう現象がある.

Q.これからどうしたらよいか
A.この活用についてはオンラインゲームなどで,ゲームに親しんでいない女性や子供などに
  対して,新しいゲーム体験をさせることが出来るインタフェースになり得るのではないかと
  考えている.

Q.今のユーザインタフェースをなんとかしたいという研究?
A.道具としての扱いじゃないインタフェースがあってもいいのではないか.これは道具では
  あったけども,だんだん愛着が湧いていく.アンケートの結果として,最後にアンケート
  項目の「クマ」という項目について,ロボットかCGキャラクタのどちらかと聞いたところ,
  インタラクションがうまくいっているグループの被験者は,愛着が湧いたが,ロボットに
  対してなのか,画面上のキャラクタに対してなのかわからない,全体がクマという感じが
  あると答え,インタラクションがうまくいっていないグループは,画面上のキャラクタ
  という回答であった.

Q.キャラクタ大小の比較は何なのか?画面のピクセルは一緒か?
A.一緒

Q.ディスプレイのサイズなのかPCが見えているのが問題なのか?
A.比較実験としては不適切であると思います.キャラクタサイズを変えたりするのみで実験を
  行うべきであったかもしれない.ただ,大きいディスプレイではCGキャラクタが壁にぶつかる
  場合はその手前で操作を止めたりさせていたけれど,小さいディスプレイでは,キャラクタを
  壁に体当たりさせたりしていたため,細かいところが見えていないと思われた.そういった
  ことも要因となっている.

Q.対応関係で,ぬいぐるみとCG間でデフォルメ化があるけども,たとえばCGが線画など実世界
  のロボットを動かすゲームとかだったらどうなるか
A.道具として捉えた場合わずらわしいのでPSのコントローラがいいとは考えている.しかし,
  「あるくま」ではインタフェースがぬいぐるみであったことに意味があったのでは.

Q.CGが実写だったらどうなるか
A.くまだから四つんばいで動かした人もいた.その場合は動作がちぐはぐで面白くないという
  意見が出た.対応付けられてないと問題が発生するのではないか.世界観にあったCG
  キャラクタを使うのが重要ではないのか.

Q.実験項目とかアンケート内容がうまいとおもった.内面をえぐられるような印象をうけた.
  何か,参考にされた物は?
A.ほぼ独自路線.差が出て欲しいという項目はいれる.あとは,「あるくま」が,人間に
  とってどんな意味があるのかをアンケートを作る前に考え,感情的な面を含めて色々と
  考えた.その中で愛着というものが重要であると考えたため,そのような部分を露呈させる
  ような質問とした.また実験をするときには,かならず被験者の性格特性を調べるが,
  その場合は心理測定尺度集という本から引用している.

Q.実世界での直感的な行動という点で,クマの足を動かせないのが気になる.足を動かせた
  ほうが直感的に動かせるのではないか.かわいいのではないか.
A.このぬいぐるみロボットが座っているタイプのロボットで,足を掴むと,ロボットの上体が
  倒れ,外観的親和性が崩れるため,手を動かすものとした.道具としての直感的というもの
  とは違う直感を利用したかった.

Q.持ち方に依存したりしていないか
A.足は付属品のイメージがある.手を引っ張れば歩いてくれる.ぬいぐるみの向きなどに
  注目した.

Q.「あるくま」というインタフェースとして愛着をどれだけもてるのかっていう着目している
  と思う.道具として直感的なインタフェースを作っているということではないのでは.
A.「あるくま」では操作中の,歩いているときのぬいぐるみインタフェースの動きにも可愛さ
  を残したいと考えて作成した.特に手の動きの見た目がかわいいということも考慮した.

Q.比較図で他者となっているというのは,手を動かすと歩くという点が伝達においてズレ
  ということになっているのでは.
  ・意見として
    ボタンを押す場合では直感的ではない
    コントローラとしてはモデル化して直感的になっている.
A.お茶大の人は名前も,説明もない状態で「あるくま」を歩かせることができていた.
  どうして歩かせることができたのかを聞いてみると,よく犬を膝に乗せて似た運動を
  させていたといった.

Q.ロボットの姿勢に依存していないか.
A.多くの人が自分の方にロボットの顔を向けて操作しているのを見たけれども,電通大の方に
  やってもらっていると,多くの人が,背中を向けて動かしている様子を見る.けれども
  ぬいぐるみと対面して動かしているという行為は,愛着に影響を与えていると考えられる.
  さきほど説明した,お茶大の人は背を向けて「あるくま」を操作していたが,イメージは
  コントローラではなく,愛着のある犬をイメージした行動なので,背を向けていても同じ
  印象をもったのでは.

Q.びっくりくまはお茶大で実験したのか?
A.してない

Q.実験において意図しない行動を電通大の人はよくやるのでは
A.ハチにさされた様子を見てかわいいといった楽しみ方をしたひともいるので,大学の専門
  によって変わるのでは.

Q.顔をみただけで結果の予想ができないか
A.あるくまでは触り方で予想が出来たりする.理系の方々だと,腕のサーボが何軸とか,加速度
  センサが入っていないかとか調べるような行動をとる.お茶大だとロボットフォンがサーボ
  の関係で震えが仕様であるが,それを見て,ロボットが震えているという印象を受けて,
  かわいそうと感じ,触ることができない人もいた.

Q.商品化についてはどうか.簡単に作れるなら欲しい人がいないか.
A.商品化についての話はまったくない

Q.これに関してはゲームの研究をするという風に捉えていいのか
A.ゲームは正負の報酬があり,その点を見ると,現実世界と同じであるため,より自然な
  人間の反応を見るということでゲームをアプローチの一つとして使用している.

Q.関連研究に付いて知りたい.ゲームについて産業という点で研究をしていきたい.ビブラ
  という学会があるのでそこに応募していたりしないのか?
A.ゲームはやったことは無く,PSもほぼ触ったことがないため,一般的なゲームとの比較は
  できていない.ロボットを使ってゲームキャラクタを動かすのは電通大の稲見研でやっている.
  その稲見研の研究とあるくまとで違うのは,道具として直感的なものを開発するというよりは,
  インタフェースそのものに対する愛着を発生させるという目的である.

Q.バルーントリップで生体信号を出すかグラフを出すこと,また,それらをみることで揺らぎ
  が小さくなるひともいるのか?
A.いる.信号を見て制御しようとする人もいたりする.Wissでやった時では鉄の心臓を
  持っている人がいて,全く動じず信号がフラットなこともあった.

Q.信号を見てあわてる人,フィードバックしようとする,2タイプ居る?
A.いる.動揺したら敵が増えることを伝えてあるので普通は,大抵焦ってしまう.

Q.2×2のマトリックスに分けられる点で面白い.Web上で大規模にアンケートをとったり
  して,そういった仕分けが出来れば面白いのでは.
A.ゲーム以外でもなんでも使えると考えている.実験では,生きていて一番楽しかったこと,
  一番辛かったことを話してもらったこともあるが,分類できた.4パターンに分類できる.
  現状では,システムとして片手しか動かせないという点で今は汎用的でない.

Q.マウスとか携帯に取り付けられると良いのでは
A.そう思う.だが,今は動かすほどノイズがのってしまう.

Q.マトリックスの内容を受けクマが動くと面白いのでは?
A.人の状態を調べながら,それを反映させれば,人工エージェントの振る舞いなど,より
  人間にとって良い適応が出来るのではと考えている.

Q.あるくまで直感的な場合,間接的な場合.あるくまでコントローラで実験はしたのか
A.今PSのコントローラで動かす比較実験を行う途中である.また,ロボットのキャラクタ性を
  排除し,さわり心地のみを再現したコントローラで,実験を行う予定である.

Q.意外性のあるコントローラなので,別個の存在として感じたり,愛着がわいたりするのでは?
  どうしてそうなるのか分からないから愛着がわくのでは?
A.インタフェースのわずらわしさが,インタラクションを終わらせることもあるかもしれないが,
  あるくまでは,そのわずらわしさが,よりよいインタラクションにしているのでは.

Q.足を動かす場合とかと比較できればよいのでは?
A.そう思う.そうすればもっと,一般的なものと「あるくま」との違いが分かりやすく説明する
  ことができる.

Q.コントローラで「あるくま」を動かす実験だと,長い間もたないかもしれないが,それは
  それで結果なのでは.
  意見:クマであれば長く触ってしまう気がする
A.人によっては,ロボットの毛並みをそろえる行動をとる人もいるので,個人差がでそう.

Q.男性ではせいぜい10~30分とかが限度では
A.今回の実験では差がなかったが,男女差はあると思う.ただ,男性でもプーさんの
  ぬいぐるみなどを集めている人もいるので,そういう人をキャッチできるかもしれない.